incognita et cognita

インコグニータ(incognita)のエンジニアリング・音楽・数学・雑学日記です

クラウド化する世界(ニコラス・G・カー)

池田信夫blogで紹介されていた「クラウド化する世界(原題:The Big Switch)」をひまつぶしに読んでみた。

かつて「電力」が、各企業の工場内での自前調達から、送電線を経由した電力会社からの調達に変わったように、コンピューティングについても、ハードウェア・ソフトウェアともに、自前調達は少なくなっていくだろうというもの。

この流れ自体は、多くの人が認めるところだろう。

この本では、世の中がそうなったときに、あるいはそうなる過程で、どういう現象が起こるのかが、米国内での事例を多々引用しながら、淡々と述べられている。

たとえば、第7章「多数から少数へ」では、ざっくりいうと、

YouTubeなどに見られるように、多くの人たちが、便利な道具を得て、ボランティアの「生産者」になっており、玉石混交とはいえ、すぐれた生産物も混じっている。だが、それによって富を得ているのは、富を得る才能とビジョンを備えたごく少数の人たちだけである(業界では、このような仕組みをアウトソーシングをもじってcrowdsourcingと呼ぶ)。このように、ワールドワイドコンピューティングの進化は、デジタルエリートを強化させ、大多数の中産階級を弱体化する方向に拍車をかける現状となっている。

というようなことが述べられている。

いろいろな事象が記述されていいるので、「結局どうなのよ?」というのが、一読しただけではちょっとわかりづらい。また、米国で起きていることと、日本で起きていることは必ずしも同じではないが、ではその違いはどこから来ているのか?ということを考えながら読むのも一興だろう。